シカゴの研究所を半日回って感じた2つのこと

タイトル、こうすればキャッチーだよとネットの記事で見かけたので。。。

前回の記事はシカゴ滞在中にシカゴ響の感想を書きました。ただシカゴ響は土日休みを利用して聴きに行っただけで、メインはシカゴにあるArgonne National Laboratoryにお邪魔することでした。COEの規定で、COEから援助してもらって海外渡航するときは、学会だけではなくどこか大学や研究所に立ち寄りなさい、という嬉しいけど謎な制度があります。たまたまANLに自分の研究室の先生がサバティカルでお世話になっているので、予めアポを取って訪問することになりました。

今回お邪魔したのは、Energy DivisionのTribology Research Group(だったっけな。。。)というところです。機械要素の潤滑材や摩擦の研究をしている部署であり、グループリーダーのAli Eldemir先生という方にお会いしてきました。一応自分の研究界隈ではわりと有名な方で、液体潤滑の添加剤や固体潤滑剤などの材料合成等の研究をされています。ちょうど年度またぎの頃でバタバタしていたらしくあまり時間は取れませんでしたが、とりあえず顔と名前だけアピールして来ました。

あとは研究室の先生に連れられて実験室などを案内していただきました。摩擦がメインの研究対象ということもあり、摩擦試験機が10台くらいありました。荷重、環境などいろいろな状況に対応できるように。他には合成装置があったかなー、という程度で、実は実験装置がそれほど充実している、というわけではありませんでした。

で、本題の感じた3つのこと。これは今後自分が研究生活を送っていく上で(特に日本という環境で)いろいろ意識していないといけないことなのかなぁとざっくり思いました。

1. 実験装置の性能が研究の成果を決めるわけではない

まず一番痛感したのはこれです。研究所には先ほど述べたとおり、摩擦試験機は充実しているものの、例えば合成装置とか構造解析装置(ラマン・XPSなど)は置いてなかったりだとか、周りの装置は決して充実しているわけではありません。なのに研究の最先端を行っている。これは研究する環境が充実している、ということに尽きます。ポスドクなどの研究員の方が決して長時間研究活動に没頭しているというわけでもありません。決められたことをきちんとやり、ディスカッションを行い、フィードバックしてさらに次の実験を進める、という当たり前のことを、とても短いスパンで何度も何度も繰り返し行なっているからです。少しの空き時間にでもディスカッションを行い、そこで必ず次の方向性を決める、という適切なフィードバックを行えるような環境というのは、おそらく研究員のモチベーションの維持にもつながるし、それが結果的に研究成果として短期間で評価されることになるのだと思います。

2. コラボレーションの壁が低い

訪問したグループは、積極的に他のグループや企業などと共同研究を行っているようでした。もちろん外部資金の獲得のため、ということもありますが、参画するまでの障壁が極めて低い、と感じました。トライボロジーという学問領域は、力学、表面科学、物理化学、熱力学、流体力学など様々な研究領域が融合して出来た領域ということもあり、決して摩擦だけをピックアップして何かを解決する、ということが出来ない分野でもあります。ですがそのコラボレーションの積極性はおそらく日本と比較してもかなり高いんじゃないかなぁと(確固したデータがあるわけではないですが)。例えばこのグループは高耐熱性材料のグループと共同で研究室を運営しているらしく、多くの知見をお互いに交換して、さらに研究を加速しているようです。一方、日本では先日自分の研究室がプロポーザルを出して落ちた科研費のフィードバックで「他分野には手を出すな」という通知があったそうです。基礎研究をやれというメッセージのようでしたが、それだけで食っていくというのは正直これからは難しいんじゃないかなぁと。国の科研費だけに頼るような研究体制はこれからは維持していくのが大変ではないか、というよりも、社会のためにフィードバックするにはどうもそぐわないのではないか、と感じました。

といった印象を受けました。他にもポスドクの方ともお話をしました。アメリカの国立研究所と言えども、任期なしのポストにつくことは非常に難しい、どころか財政難でこれからは減っていくということになるようです。そのため外部と共同研究で予算を引っ張り出して、そこからポスドクを雇う、という形があるようです。お会いしたのはインドと韓国の方でしたが、ふたりとも国に帰るようなことを仰っていました。ポスドク事情はアメリカも厳しいのかもしれません。

以上個人的な感想をつらつらと述べてみました。もしかしたら実情は私が知る限りのと異なっているかもしれません。とにかく、素敵な体験が出来たと思っています。


About しゅ

修士課程終了後、某素材メーカーに就職→1年2ヶ月後退職、大学に戻り2011年10月から博士課程在籍。 専門は表面機能材料およびトライボロジー、特にナノカーボン材料の合成プロセスと物性解析。 妻子持ち。7歳長男、2歳長女。 2013年4月よりJSPS特別研究員(DC2) Twitter @sss7sss77 Facebook shu.sawai
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